大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)104号 判決

原告 日本楽器製造株式会社

右代表者代表取締役 川上浩

右訴訟代理人弁護士 神谷巖

同 藤本博光

同 吉武賢次

同 藤本真子

同弁理士 猪股清

同 猿渡章雄

被告 特許庁長官若杉和夫

右指定代理人通商産業技官 中村寿夫

〈ほか一名〉

主文

特許庁が昭和五七年三月二三日、昭和五六年審判第一〇七四二号事件についてした審決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

原告は主文同旨の判決を求め、被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、徳島忠夫が昭和四五年一二月二九日にした特許出願(昭和四五年特許願第一二四一八二号)の特許を受ける権利を譲受け、その一部を、特許法第四四条第一項の規定により、昭和五〇年三月一七日、名称を「磁性材料」とする発明(以下「本願発明」という。)として、新たに特許出願(昭和五〇年特許願第三二〇七六号)をしたところ、昭和五一年六月二五日出願公告(昭和五一年特許出願公告第二〇四四五号)されたが、訴外住友特殊金属株式会社外五名から特許異議の申立があり、昭和五六年三月二日拒絶査定を受けたので、これに対し同年五月二八日審判を請求し、昭和五六年審判第一〇七四二号事件として審理されたが、昭和五七年三月二三日右審判の請求は成り立たないとの審決があり、審決の謄本は同年四月二四日原告に送達された。

二  本願発明の要旨

Si〇・二~五原子%、B〇・五~一二原子%、Al〇・二~五原子%の一種又は二種以上及びCo一〇~三五原子%、Cr一五~四〇原子%、電子個数差が-0.5~2になるようにTi、V、Zr、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Zn、Geの一種又は二種以上(但し、Mo単体は除く。)を含有させ残部をFe二七原子%以上としたスピノーダル分解型磁性合金。

三  審決理由の要旨

本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

ところで本願明細書の記載によれば、本願発明は、Fe―Cr―Co系合金即ちスピノーダル分解型磁性合金について、その磁気特性、機械加工性等を改良しているというものであり、実施例としては膨大な数のものを含んでいる。しかし、これを裏付けるものとして、都合三〇の場合について示されているもののうち、本願発明の実施例に相当すると認められるものは、出願公告時の明細書で示されたもののうち僅かに二例、昭和五二年六月六日付手続補正書で加えられたものを加えても僅かに三例(第1表中試料番号7及び第2表中試料N、Q)があるに過ぎない。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、膨大な実施例を含む本願発明の要旨について、これが十分に裏付けられているものとは認められないので、本願は特許法第三六条第四項に規定する要件をみたしているとは認められない。

四  審決取消事由

1  その一

(一) 審決は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された数の実施例では不十分であり、本願発明の要旨が十分に裏付けられていないので、本願は特許法第三六条第四項に規定する要件をみたさないとする。しかしながら本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に発明の目的、構成及び効果が記載されており、審決にはこの点の判断を誤った違法があるから取消されねばならない。

(二) 本願公告公報(以下単に「本願公報」という。)第一欄第一八行ないし第二欄第一〇行には、スピノーダル分解を起こすFe―Cr―Co系合金について、新たに各種の添加元素を追加することにより、該合金の磁気特性、機械加工性を改良しようとする本願発明の目的が記載されている。

次に本願公報第二欄第一一行ないし第一六行、同第一九行ないし第二四行、手続補正書第二頁第一五行ないし第三頁第六行には、本願発明にかかる組成物の材料の配合比及び性質が記載され、本願公報第二欄第二四行ないし第三欄第六行。第七欄第二六行ないし第八欄第一二行、第1表、第2図、第3図、手続補正書第三頁第七行ないし第一九行、第2表、第1図には、右の如き配合比を選択する理由が記載されており、発明の構成において欠けるところはない。

更に、本願公報第二欄第三五行ないし第四欄第一一行、第七欄第二六行ないし第八欄第一七行、第1表、手続補正書第2表、第1図には、右の如き構成をとったことによる機械加工性、磁気特性の向上という発明の効果が、各々八例、二二例の具体例と共に記載されている。

以上、本願明細書の発明の詳細な説明には、発明の目的、構成、効果が記載され、これらは有機的に関連しているので当業者には本願発明の内容が容易に理解でき、したがって容易に実施することができる。よって、特許法第三六条第四項の規定する要件をみたしているものである。

(三) 審決は、本願明細書の発明の詳細な説明中の実施例では不十分であるとするので、この点を更に検討する。一般的に、発明の構成を説明するに当っては、原則として特許請求の範囲に示されている発明の構成要件が実際上どのように具体化されるかを示す実施例を記載し、発明の内容を具体的に把握できるようにすることが必要であるが、発明の構成がきわめて具体的である場合は、これを更に具体化した実施例をまつまでもなく、その発明の内容を正確に理解できるし、その発明を容易に実施することができるから、この場合、実施例の記載は必要でないとされる。

もっとも、右は主として電気、機械の分野における発明の如く、その構成の把握が比較的困難な場合に主眼をおくものであり、構成としては単に材料の配合比を定めれば足りるような化学の分野の発明では、むしろその配合比を限定することによる作用効果を明示して発明の内容を示すべきであると思われる。しかしいずれにしても、要するに実施例の記載をどの程度必要とするかは、当業者が発明の目的、構成、効果を理解し、その実施をすることができるようにするという、技術の公開の目的との関連において定まるものであるということができる。

この観点から本願発明をみるに、構成自体は材料の配合比を限定するというのみであるから、実施例を記載する目的は主として本願発明の作用効果を明らかにすることにある。本願発明の作用効果は、Si等を添加することによるFe―Cr―Co系スピノーダル合金の機械加工性の向上と、電子個数差がマイナス〇・五ないしプラス二になるようにTi等を添加することによる同合金の磁気特性の向上を達成することにある。そして、前者については第1表に八例、後者については第2表及び第1図に二二例の記載があり、これらによって前記各特性が向上する事実が明示されているのである。そして、本願明細書の記載から明らかなとおり、Si等を添加することによる機械加工性の向上という作用効果と、電子個数差の調節による磁気特性の向上という作用効果は区別して認識しうるものであり、上記二要件のそれぞれの意義は前記合計三〇例から明瞭に理解されるのであるから、これらの要件を組合せたときに各要件から得られる個々の効果が得られないという特段の事情があれば格別、本願特許請求の範囲に直接該当するものが三〇例中三例であることのみをもって、本願発明の作用効果の理解が十分できないとはいえないはずである。

以上、当業者であれば、本願明細書中の三〇例の記載があれば容易に本願発明の作用、効果を理解しえ、その実施も容易にできるものであるから、あえて更に実施例の記載を要求する必要はないのである。

(四) なるほど本願発明の実施例は数万にも上るところ、本願明細書にそのうち三例しか記載されていない。

しかしながら、本願発明においては、機械加工性の向上と磁気特性の向上を、それぞれ異る方法により達成したものであって、その各々については第1表の八例及び第2表と第1図の二二例の記載から明確に理解できるものである。言葉をかえていえば、本願発明においてはTi、……Geの元素はMoの代替元素として磁気特性の向上を達成するために添加されているものであるから、第1表にFe―Cr―Co―Mo合金に対するSi、B、Al添加の効果が記載されている以上、当業者はFe―Cr―Co―X(XはTi、……、Ge)合金に対するSi、B、Al添加の効果は容易に知りうるのである。したがって、Si等とTi等の双方を同時に添加したとき右作用効果が得られないことが明らかであればともかく、そうでない以上、右同時添加の作用効果を明細書に記載しなければ、特許法第三六条第四項に定める要件を欠くということにはならないはずである。

2  その二

(一) 審決に至る審判手続は特許法第一五九条第二項に違反し、拒絶理由の通知をしないまま査定と異る理由によって本願を拒絶すべきものとし、原告に意見書を提出する機会を与えなかった違法があるから、審決は取消されるべきである。

(二) 即ち、昭和五六年三月二日付拒絶査定では、拒絶の理由は特許異議の決定に記載した理由と同じであるとされ、同日付の特許異議の決定では、(1)電子個数差(以下「⊿e」という。)は厳密な理論に基づくものではなく、経験的法則に基づくものと認められ、したがってこの⊿eによって発明を限定する際には当業者が⊿eと磁気特性の間の当該経験則を容易に理解できる程度に具体的事実に基づいて説明する必要がある。(2)同一の⊿eに対しても、(BH)maxの実験値にはかなり大きなバラツキがある。(3)⊿e=0~0.5付近においては⊿eと(BH)maxとの間に一定の相関関係の存在を予測することは不可能ではないが、他の部分では具体例はわずかである。(4)以上により、具体例自体にみられる実験値のかなり大きなバラツキを前提にすると、⊿eと(BH)maxとの間に存在する経験則を当業者が容易に理解することはできない、ことを理由の要旨としている。したがって原告は審判請求理由補充書において、右の諸点について縷々議論したのである。

一方、審決は、前述の如く、本願明細書には多数の具体例のうち本願特許請求の範囲に包含される実施例がわずか三例しか記載がなく、本願発明の要旨が十分裏付けられていない、とするものである。もしこの拒絶理由が原告に通知されていたならば、原告は右範囲に入る実施例を提出して補正することもできたものであるが、その通知がなかったので、右補正の機会がなかったのである。

(三) 前記1(三)でも述べたように、実施例の記載は特許発明の理解及びその実施を容易にするために要求されるのであるが、必要最少限何例の実施例の記載を要するか、を決することは必ずしも容易なことではない。事実、審決においても本願発明という具体的事例において何例の実施例の記載が必要であるか、の基準は示されていないのである。したがって、このような困難な判断を伴う事項については、拒絶理由通知において十分な指摘がされ、出願人による十分な意見陳述及び補正の機会が与えられるべきであるにも拘らず、本件では別途の拒絶理由通知がなされることもなく、直ちに拒絶審決が下されたものである。

更に、本願は、原出願から分れた分割出願二件のうちの一件であるという特殊な事情から、Si等の添加効果と⊿e調整の効果とが理解されればこれらの要件の組合せからなる本願発明の効果は十分に理解できるとの判断に基づいて、本願発明の要件すべてをみたすものが三〇例中の三例になったわけであるが、もし、これでは本願発明の作用効果が十分理解できないというのであれば、その旨、別途の指摘があって然るべきであった。

第三被告の答弁

一  請求の原因一ないし三の事実は認める。

二  同四の審決取消事由の主張は争う。

審決の結論及びその理由は正当であり、原告が主張するような違法は何ら存しない。

1  その一について

本願明細書及び図面の記載によれば、本願発明は、スピノーダル分解型磁性合金について、その磁気特性、機械加工性等を改良するのを目的としているというものであり、このため採られている構成は、その特許請求の範囲に記載されているとおり、Fe、Cr及びCoに加えて、Si、B、Alの一種又は二種以上を含むとともに、Ti、Vその他都合一二種の元素の一種又は二種以上をも一体に含有する(この場合、その一二種の元素の一つとしてMoを含むときは、その余の一一種の元素の一種又は二種以上をも含む。)ものであるから、本願発明の要旨に含まれる個々の具体的構成即ち実施例は、並の数ではなく、それら各成分が含まれる量的割合については措くとして概算しても、その数、数万にも上るものである。

そして、本願明細書及び図面の記載によれば、本願発明は、ここでいう電子個数差なる概念の由来及びその利用を含めて、いわゆる反復実験等の結果として完成され、成立しているものという外はないものであるから、本願明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、本願発明をそのように反復実験等の結果として完成され、成立しているものとして納得・理解し、容易にその実施をすることができる程度に、この発明の目的、構成及び効果が記載されているものといいうるためには、本願発明について、その目的を達成する上で必要な個々の具体的構成即ち実施例及びこれらにより実際上得られる具体的効果が、それ相当に十分に裏付けられていて然るべきものといわざるをえない。

しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の要旨に含まれる具体的構成即ち実施例については、出願公告後に加えられたものを含めても、僅かに三例しかなく、その要旨をみたし、Moを含む実施例に至っては、ただの一例すらも見当らない。

以上の事実からして、本願明細書の発明の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、本願発明の目的、構成及び効果が記載されているものとは到底いえないものであり、即ち、本願が特許法第三六条第四項に規定する要件を満たしていないときに該当するものであるに外ならないものである。

審決の一丁裏第一二行ないし二丁表第一一行で「ところで、……に規定する要件をみたしているものとは認められない。」としているのは、右のような事情を述べたもので、この認定、判断に誤りは何ら存しない。

原告は、本願明細書に本願発明における機械加工性の向上と磁気特性の向上との二要件についてそれぞれいくつかの例を含む三〇例があれば、当業者であれば、容易に本願発明の作用、効果を理解しえ、その実施も容易にできるものである旨主張するが、本願発明は、本願明細書の特許請求の範囲の記載から明らかなとおり、それら各構成要件の成分が一体に含有されて成り立っているものであるから、それらいくつかの例は、せいぜい一種の比較例あるいは本願発明に至るその前駆的なものとしての意味をもつものであるに過ぎず、ただこれを根拠としていう原告の右主張が当を得たものであるとは到底いえない。そしてこの点、本願発明の場合、主として機械、電気の分野でみられる発明とは異なり、それに含まれる個々の具体的構成に対応する効果、即ち特性が、現にそれらを個々に実際上実施したのでなければ確認し納得しえないものである点を考慮すれば、なお更のことである。

2  その二について

審決でいう、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の要旨について、これが十分に裏付けられているものとは認められない、という理由については、原査定の拒絶の理由である、住友特殊金属株式会社の特許異議の申立についての特許異議の決定の理由でも、その第二頁第三行ないし第六行その他で、実質上そのとおりに指摘されているし、そして、この指摘は、右特許異議の申立の理由での指摘を受けてされているものである。

原告は、本願明細書において本願発明の実施例が少ない点については、拒絶理由通知で十分な指摘がされ、補正の機会が与えられるべきである旨主張するが、この点についての指摘は右のとおり十分にされていたものであるし、また、拒絶理由通知は補正指令などではなく、そして、当業者が本願発明を納得、理解する上でキイポイントとなる具体的構成即ち実施例及びこれにより実際上得られる具体的効果は、出願当初からそれ相当に十分に裏付けておかれるべきものであること等からして、原告の右主張は見当違いの主張といわざるをえない。

ちなみに、本願は、昭和四五年特許願第一二四一八二号の一部を新たな特許出願として出願したものであるが、この原出願の出願当初の明細書及び図面には、本願発明の実施例に相当するものはただの一例すらも記載されていない。

第四証拠関係《省略》

理由

一  請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

《証拠省略》によれば、本願明細書には、本願発明の目的に関して、「本発明は、Fe―Cr―Co系合金、即ちスピノーダル分解型磁石合金に関し、新たに各種の添加元素を追加することにより、該合金の磁気的、機械的特性を改良するようにしたものである。」(本願公報第一欄第一八行ないし第二一行)と記載されており、また本願発明の構成及び効果に関して、追加すべき添加元素につき、機械的特性を改善する目的で、Si、B及びAlの一種又は二種以上を用いること、また磁気的特性を改善する目的で、本願発明にいう電子個数差がマイナス〇・五ないしプラス二になるように、Ti、V、Zr、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Zn及びGeの一種又は二種以上を用いることが、それぞれ具体例をもって記載されていることが認められる。即ち、本願公報の第二欄第二九行ないし第三欄第九行、第1表、第2図及び第3図には、Si、B及びAlを合金の構成成分として用いることの意義及びそれらを用いた場合における機械的特性の改善効果が八つの例をもって示されており、また、本願公報第七欄第二六行ないし第八欄第一二行並びに昭和五二年六月六日付手続補正書第2表及び第1図には、Ti、V、Zr、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Zn及びGeを前記の電子個数差となるように合金の構成成分として用いることの意義及びそれらを用いた場合における磁気的特性の改善効果が二二例をもって示されている。

本願明細書の発明の詳細な説明における前記合計三〇例の中で、本願発明の実施例に該当するものは、本願公報第1表の試料番号7及び前記手続補正書第2表の試料N及びQの合計三例にとどまることは審決指摘のとおりであるが、本願発明の実施例をも含めて、これら三〇の例によれば、Fe―Cr―Co系合金において、合金の構成成分として、Si、B及びAlの一種又は二種以上を加えれば、その機械的特性が改善されることは十分理解することができ、また同様に、合金の構成成分として電子個数差がマイナス〇・五ないしプラス二になるようにTi、V、Zr、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Zn及びGeの一種又は二種以上を加えれば、磁気的特性が改善されることもまた十分に理解することができる。

したがって、本願発明の作用効果、即ち、本願明細書の特許請求の範囲に本願発明の構成として記載された、Fe―Cr―Co系合金において、Si、Al及びBの一種又は二種以上を加え、電子個数差がマイナス〇・五ないしプラス二になるように、Ti、V、Zr、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Zn及びGeの一種又は二種以上を加えた構成を採用したことによる作用効果は、前記三〇の例から容易に類推することができるものであるといえる。

そして、弁論の全趣旨によれば、一般に合金の技術分野においては、合金を構成する元素が特定されれば、それら元素を構成成分とする合金を製造すること自体格別困難を伴うことなく実施できるものと考えられるから、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の実施例としては三例のみの記載にとどまり、必ずしも十分な数の実施例が記載されているとはいえないにしても、前示のように、本願発明の実施例を含めて、本願発明に関連性を有する例が三〇例示されており、その記載内容を加味すれば、少なくとも、本願発明の目的、構成及び効果は、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているといわざるをえない。

したがって、本願が特許法第三六条第四項に規定する要件をみたしていないとした審決の判断は誤っており、その余の点について検討するまでもなく、審決は違法であるから、取消されねばならない。

三  よって、審決の取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につさ、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 舟本信光 裁判官 竹田稔 水野武)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例